2次試験直前
ちょうど2次試験から2日前に、オンライン英会話での最後の英検1級面接対策講座がありました。
一応模擬試験ではかなりサマになってきたのですが、不安で仕方ない私は最後に先生に尋ねました。
“This might be a difficult question to answer, but do you think I will pass the exam?(これは答えにくい質問かもしれませんが、私は合格できると思いますか?)”
そうすると先生は、間髪を入れずにこう言いました。
“Definitely.”
この一言は正直シビれました。
初めてのオンライン英会話ではボコボコになったのに。
自分ではまだ不安なところが一杯あるのに。
それにも関わらず、先生は迷いもなくDefinitely(間違いない)と言ってくれたのでした。
私はこの言葉に非常に救われたのを今でも覚えています。
普段は逆の立場ですが、生徒が試験本番前に感じる不安や、講師からかけられる何気ない一言がどれほどの力を持っているのかを思い出すことができました。
その後先生は「明日は前日だから、あまり勉強しすぎずにしっかり休みなさい」と言ってくれたので、その助言に従おうと思いました。
翌日(試験前日)…。
やはり色々と不安だったので、2次試験対策で自分が暗唱したスピーチ30本を全部暗唱しました。
そうすると少し声が枯れてきたので、「これが潮時か」と思い勉強をやめました。
2次試験当日(起床〜出発)
集合時間は14:00。自宅は13:00に出れば間に合いますが、当日は9:00に起きました。
早起きしてしたかったことは、暗唱したスピーチ原稿の最終チェックでした。
トピックを見ただけでスラスラと意見が言えるか、やはり30本全てを確認しました。
その中で、一つ引っかかるトピックがありました。
そのトピックとは
“Would increasing over-reliance on robots and computers pose a threat to society?(ロボットとコンピュータに対する過剰依存が増すと社会の脅威となり得るか)”
というものでした。
このトピックは、初めてのオンライン対策講座でボコボコにされたトピックとほぼ同じものでした。それだけに感慨深く、直前でも目が留まったのだと思います。
自分のスピーチに若干の弱さを感じた私は、「東大ロボット」のことを思いだしました。
東大ロボット?なんだそれ?
これは、国立情報学研究所の新井紀子教授が主導したプロジェクトで、「AIは東大入試に合格できるか」をテーマに開発されたAIです。膨大な大学入試のデータを入力されて東大入試に臨んだ「東ロボくん」は、理数では合格水準に達したものの、読解力を問われる国語と英語では、遂に合格点に達することができませんでした。
「AIはデータを集積して『それらしい』解を出せるに過ぎず、結局は人類の脅威にはなり得ない」という結論を私はどうしても入れたくて、直前ながら原稿を作成しました。
後は、リスニングを磨いておきたいと考え、ポッドキャストの「CNN10」を視聴し、13:00前に家を出ました。
2次試験当日(会場到着〜本番直前)
会場に到着したのは13:40頃でした。14:00集合予定なので、まずまずの時間です。
受付で携帯電話を入れる袋を受け取ります。首から下げるタイプでiphoneを入れ、以後会場内は一切携帯電話を使用できません。
他の受験生の方々とエレベータに乗り合わせたのですが、他のフロアで別の級の面接もあるようでした。英検1級のフロアのボタンを押すときにやや誇らしくなったのはここだけの話です。
フロアに着くと、部屋に案内されました。部屋は複数用意されており、基本的に早いもの順。私は2つ目の部屋に通されました。1列に10人座っている中で3列目先頭の席(つまり、2部屋目の21番目)に座りました。
そのフロア、その教室にいる人たちは当然のことながら、全員が英検1級の2次試験面接受験者なのですが、事前に各種サイトで調査していた事実に反して、意外に若い人たちが多いイメージでした。大学生か、それより上でもおそらくまだ20代後半ぐらいの、特に女性が多かった印象です。
部屋に通されてからは、結構待ち時間があります。これも事前に調べていたため、予め用意していた「英検1級面接大特訓」を開いてみました。しかし、案の定あまり頭には入ってきません笑
ちなみに英検1級面接大特訓」を持っている人は他にもかなりいました。やはり1級受験のバイブルだなぁと実感しました。
集合時間から待つこと1時間10分。15:10頃にお呼びがかかりました。
3人ずつ呼ばれ部屋を出て行きます。私はそのグループの1人目でした。3人連れ立って係の人に付いて行き、待機していたフロアから1つ上のフロアに歩いて登りました。
上階に着くとガランとしたフロアに部屋が3つ。
それぞれの部屋の前にイスが2つずつ用意されており、それぞれ1人つずつ待機している人がいました。その隣に空いている座席にそれぞれ、私たち3人が順に誘導されました。1人目(私)は手前の部屋前、2人目は奥の部屋前、3人目は右の部屋。
しばらくすると、自分の隣に座っていた前に女性が部屋の中に呼ばれました。
その女性が座っていた座席に移動し、微かに聞こえる部屋の中のやり取りにソワソワし始めました。
その間に係の人が「面接カードを出してください」と確認に来ました。後で分かることですが、これは部屋の中でのやり取りを簡略化するためでした。
そして、とうとうお呼びがかかります…。
「どうぞ中にお入り下さい」
2次試験本番①(2分間スピーチ)
ノックして部屋に入る。
奥左にはネイティブの中年男性、右には初老の日本人が面接官として鎮座。
入ってすぐの右手にはタイムキーパー?が控えている。
部屋に入って着席を促される。
お決まりの自己紹介。
職業とそれにまつわるちょっとした質問が終わると、流れ作業かのように本番突入。
「そこにあるトピックカードを表に向けて下さい」
と英語で言われる。
「あれ?Here is your topic card. —Thank you.みたいなやり取りがあるのでは?」
事前情報は当てにならない。トピックカードは試験官から受け取るのではなく、目の前の机に用意されていたのでした…。
トピックカードを表に向ける時、手が震えました。勝負どころではあまり緊張しないタイプなのですが、この時が緊張の最高潮でした。
トピック5題に目を通す。
「自分が得意なトピックはないか?すぐに意見が出せそうなトピックはないか?」
必死で探しました。トピック選びで与えられる時間は1分。できれば15秒でトピックを決定し、残り45秒でプロットとボディをある程度固めておきたい…!
そう思いながら5題のトピックに目を通すと…
あった!!
“4: Would increasing reliance on computers prove harmful in the future?(コンピュータにますます依存すると、将来的に害を及ぼすことになるか)”
なんと!初めてのオンライン英会話でボコボコにされ、試験直前に「東大ロボ」の原稿を加筆した、まさにそのトピックが入っていたのです。
「これしかない!」と考え、事前に練習したスピーチ原稿からボディを思い出す。
「あれ?何だっけ…?」
あれほど練習したはずなのに、ちゃんとボディが思い出せない…!
1分終了。そのままスピーチに突入。
“There have been a lot of discussions and debates about whether or not+問題文の平叙文形”
というお決まりのフレーズで話し始めたが、少し違和感を抱きながらも”for the following reasons”と最後につけてボディに入る。
話している間、一瞬頭が真っ白になりかけてボディの1つ目はやや弱めになったけど、なんとか体裁を繕う。
たしか1点目は、「コンピュータは対人関係を築く時間が減る」と言ったはず。
2つ目のボディは「何だっけ…?」と思いつつ、”Second, …”と口にした瞬間思い出してスラスラ出てきた…!やはり「口に慣らす」練習が生きた!と思いながら「コンピュータに依存しすぎると精神を病む」という研究結果に言及したが、「1点目と内容が重複しているかも!」と思いやっぱりテンパる。
“In conclusion, for the above reasons, …”となんとか結論に入り、「あと少しで終わり」というところで2分間の制限時間が来たことを告げられる。
とっさに話すのを止めたが、ネイティブの面接官に「終わらせて」と言われたので、あと10秒ほど話して終了となりました。
2次試験本番②(質疑応答)
冷や汗タラタラで2分間スピーチを終えたと思ったら、息つく間もなく質疑応答に突入です。
「スマホはどう思う?」(ネイティブ試験官)
「スカイプとかで人とつながれるけど?」(日本人試験官)
「AIはどう思う?」(ネイティブ試験官)
「サイバー犯罪どう思う?」(日本人試験官)
オンライン英会話で経験済みの質問ばかりだったので、スピーチよりはいくらか落ち着いて答えられた気がします。
とりあえず短答で終わらないように、“主張→理由”または、“譲歩→主張→理由”という構成を意識して話しました。
ネイティブ試験官に「AIが進歩しているが、人間は仕事を奪われるのでは?」という質問をされた時は、「来た!!」と心の中で叫び、直前に練習していた「東大ロボ」の話題をすかさず出しました。
“As is demonstrated in the ‘Todai Robot Project‘, where the researchers investigated whether AI can pass the entrance examination of Tokyo University, AI cannot acquire or develop the reading skills.”(AIは東京大学の入学試験に合格できるかを研究者たちが調査した『東大ロボ計画』で実証されたが、AIは読解力を身につけることも伸ばすこのもできない)
という、事前に用意していた原稿内容をほぼ忠実に言うことができました。
ただ、主節(AI cannot acquire …)の前にうっかりbutを入れてしまい、「しまった!」と思ったことを付記しておきます。やっぱりテンパってましたね笑
とにかく面接官の質問に対し、真摯に一貫性を持って答えるんだ!と答え続けていると、タイマーが鳴りました。
ネイティブの面接官が「え?もう終わり?」みたいなコメントをしたので、「あ、これは合格したかも」と思えました。
その後は「退室してもいいですよ」と割と淡々と言われ、私の2次試験面接は終わりました。
2次試験直後の反省メモ
2次試験直後に残したメモをそのまま転記しておきます。まとまりがないかもしれないですが、少しでも本番の雰囲気が伝わればいいと思います。
以下メモ↓
トピックを読む瞬間に頭が真っ白になりそうになる。
英文を冷静に読むことができないので、キーワードに特に注意。
自分の不得意分野のワードが見えたトピックは回避。
得意分野のキーワードが見えたらその文をしっかり読む。
2つぐらいで悩む場合があるかもしれないが、直感で1秒くらいで決める。
残り時間は必死で論点を考える(最低2点)
自分は1個しか思いつかなかった。
トピックタイトルは読まなかった。
(I’ve chosen the fourth topic… OK, go ahead. )
すぐ始まるので、スピーチの滑り出しは自分が言い慣れたテンプレを持っておく。
頭の中
1.論点(全体像)
2.各論点で展開すべき意見(Body)
3.文法に気をつけながら後ろに文をつなげていく頭
発音を気にしている余裕はなかった。
普段の発音が出る。
interaction(質疑応答)はとにかく聞き取ることに必死。
ネイティブ面接官はアメリカ人?男性。こもり気味の英語で少し疲れ気味に見えた。
日本人はおじいさんで優しく笑顔でうなずきながら聴いてくれた。発音も聞き取りやすい。
聞かれる内容は想定内だったが、話し方は基本的に以下のテンプレート。
譲歩
I know some people argue that 質問内容,
(この間に主張を整理)
↓
主張
but I think 意見
↓
理由
because 理由
be動詞多めだった気がする。
「AだからBだからC」のように因果関係が連続する可能性が高いので論理展開にも慣れておかないと当日テンパる。
現状→問題点→改善方法
という3文形成が1パラグラフのイメージ(スピーチの場合)。
とりあえず気力で負けないこと。話しまくる。ジェスチャーはやっぱり入った。
関係代名詞とか従属接続詞をつなげると文は長くできる。従属節文頭バージョンはちょっと不安になる。=主節→従節の方がよい?句ならまだまし。
総評:とっさに口を突いて出る表現だけで勝負しなければならない。事前に準備しておいても、よほど慣れていないと出てこない。思っているより心理的に余裕はない。質問に対する答えが日本語で0.5秒で出ないと英語にはできない。発音に意識は向けられない。普段からどれほど発音を練習できているかが大事。
終わってからスピーキング能力の低下を感じざるを得ない。
以上、メモ終わり。
割と詳細にメモを残していましたね。
少しでも英検1級2次試験を受験される方の参考になれば幸いです。