英語学習に品詞って必要?
品詞なんか分からなくても意味が分かればいいんでしょ?
こんな風に思っている人は少なくありません。
しかし、品詞の知識はどんな問題でも通用する万能かつ最強の武器です。
この記事ではTOEIC満点・英検1級ホルダーの私が
実際に品詞と文構造の知識をどう使って解くのか
実演したいと思います。
以下の空所に合う適切な選択肢を選びなさい。(愛知医科大)
Harvard University economist W. Kip Viscusi recently asked a group of smokers to guess how many years of life, on average, smoking from the age of twenty-one onward would ( ) them.
① cost
② earn
③ make
④ spend
まずは文構造分析です。
Harvard University economist W. Kip Viscusi がS(主語)である。
V(述語)はaskedでask O to do「Oに〜するように頼む」という表現が使われている。
to guessが新たなVとなり、how以降がguessの目的語となっている。
というところまで確認して検討に入ります。
まず、howに注目します。
howは疑問詞と言われているものですから、通常は文頭に出てその後ろには疑問文を従えるはずです。
しかし、今回howは文中にあります。
このように文中に疑問詞を発見したら「あ、間接疑問文だ」と思ってください。
間接疑問文だと気付いたら、押さえておくべきポイントは以下の3つです。
今回の問題もhowという疑問詞が文中に出てきたので、そこから名詞の始まり、つまり文中のS・O・Cの始まりだと判断します。
今回はguess「推測する」という他動詞の後ろにあるのでO(目的語)であると判断するわけです。
次に、語順をしっかり押さえます。
“疑問詞+SV”になるのが原則ですが、疑問詞そのものが主語になっている場合(ex.「誰が」「何人が」)は“疑問詞+V”になります。
間接疑問文もそのかたまりの中では文の要素を全て揃えた完全な文を形成するということがポイントです。
「間接疑問文も、そのかたまりの中では文の要素を全て揃えた完全な文を形成する」って意味不明なんですが?
順番に説明するので、落ち着いてください。
ただ、これには品詞の知識も大事なので、しっかり品詞を復習したい方は下のリンクを確認しておいてください。
例えば、以下の文を見てください。
(a) He bought a book.
(b) What did he buy?
(a)の文はHeがS、boughtがV、a bookがOという典型的なSVOの文です。
しかし、(b)の方も語順が違うだけで、heがS、buyがV、whatがOのはたらきをするのは変わりません。
英文はこのように、肯定文や否定文だけでなく疑問文でもちゃんと文型が完成しているのです。
そして、間接疑問文とは、この疑問文が名詞のかたまりとなって別の文に埋め込まれただけなので、間接疑問文のかたまり内で文の要素が全て揃っている、ということになります。
さっき、whatがO(目的語)って言いましたよね?
そうです。whatは「何」と訳しますが、さっきの文は「彼は何を買いましたか」という風に、「何」には「を」がつきますよね?「を」がつくのはO(目的語)のはたらきをしているからです。
なるほど。じゃあ疑問詞はO(目的語)になるんですね。
いえ、そうとも限りません(笑)
使う疑問詞によって品詞も変わってくるので注意が必要なんです。
疑問詞にも様々な種類がありますが、その品詞も様々です。
そして、この疑問詞がどの品詞のはたらきをするのかが分からないと文の構造が分からないという事態に陥ります。したがって非常に重要な知識なのですが、なかなか複雑なのでじっくり行きます。
以下にまとめましたので、まずは意味が分からずとも目を通してみてください。
名詞のはたらきをする疑問詞:what/which/who/whose(誰のもの)/whom
形容詞(限定)のはたらきをする疑問詞:what/which/whose(誰の)
形容詞(叙述)のはたらきをする疑問詞:how
副詞のはたらきをする疑問詞:when/where/why/how
さっぱりですね。
だと思います笑
一つひとつ見ていくのでお付き合いください。
what(何が・何を)
which(どれが・どれを・どちらが・どちらを)
who(誰が)
whose(誰のものが・誰のものを)
whom(誰を)
名詞の定義とは、「文のS・O・Cになる」でした。
疑問詞でも名詞のはたらきをする、ということは「疑問詞が文のS・O・Cになる」ということです。
S(主語)には「は・が」がつきます。O(目的語)には「を」がつきます。
したがって、
「は」「が」「を」を付けることができる疑問詞が、名詞のはたらきをする疑問詞だと言えます。
これらを疑問名詞と言います。
what+名詞(何の名詞)
which+名詞(どの名詞・どちらの名詞)
whose+名詞(誰の名詞)
形容詞(限定)の定義とは「名詞を修飾する」でした。
疑問詞が形容詞(限定)のはたらきをするということは、「直後に名詞を従える」ということです。
したがって、「の」がついて後ろに名詞を続ける疑問詞が形容詞(限定)のはたらきをする疑問詞だと言えます。これらを疑問形容詞(限定用法)と言います。
how(どのように、どのようで)
形容詞(叙述)の定義とは「Cになる」でした。
C(補語)とはSやOを後付けで説明するものですが、Cのはたらきをする疑問詞はhowのみなので、ここでは深く考えなくても大丈夫です。これを疑問形容詞(叙述用法)と言います。
以下の例文を確認しておいてください。
ex1. How are you? —— I’m fine.
ex2. How did they look? —— They looked sad.
when(いつ)
where(どこで・どこへ・どこに)
why(なぜ)
how(どのように、どうやって)
副詞の定義は「文の要素にならない」ということでした。
助詞は「に」や「で」や「く」などがつくのが副詞ですが、とにかくなくても文は成立するものだと思ってください。これらを疑問副詞と言います。
まあ、疑問詞にも品詞があることは分かりましたが、この知識必要ですか?
文構造を分析する上で必須なんです。
疑問名詞のラインナップと疑問副詞のラインナップを見て、
どこかで見た分類だと思いませんでしたか?
関係代名詞と関係副詞もこの分類だったような…。
まさにその通りなんです!!
実は関係詞はもともと疑問詞だったので基本的性質は同じなんですね。
関係詞の問題を考えるに当たり、
「後ろの文が不完全文なら関係代名詞」
「後ろの文が完全文なら関係副詞」
と習ったと思います。
実は疑問詞の品詞を考えるのは、この関係詞と同じ考え方をするためなのです。
疑問名詞は、疑問詞そのものがS・O・Cのいずれかになるので、後ろの文は必ずS・O・Cのいずれかが抜けた不完全文になります。
疑問形容詞(限定)は必ず“疑問詞+名詞”の形で文頭に出ます。S・O・Cのはたらきをする名詞が疑問詞と一緒になって文頭に出るので、後ろの文はその名詞が抜けた不完全文になります。
疑問形容詞(叙述)は、疑問詞そのものがCになるので、後ろの文は必ずCが抜けた不完全文になります。
疑問副詞は、疑問詞そのものが文の要素にならないので、後ろの文は必ず抜けのない完全な文になります。
これらは、品詞の基本的な性質から当然導き出せる結論です。
品詞のはたらきさえしっかりと覚えればどんな文でも対応できる知識になるので、
丸暗記するのではなくて、論理的に考えて身につけましょう。
疑問詞にも品詞があると言いましたが、実はhowは様々な品詞のはたらきを持っているのでさらに厄介です。
まず、howには大きく以下の2通りの使い方があると思ってください。
(a) How do you go to school?
(b) How early do you go to school?
(a)の文はhowのみで疑問詞になっています。
この場合は[方法・手段・様子]を問う疑問詞で「どのように・どうやって」と訳します。
(b)の文は“how+形容詞or副詞”で一つの疑問詞を形成しています。
この場合は、後ろの形容詞or副詞の[程度]を問う疑問詞で「どれくらい」と訳します。
そもそも形で訳も変わるわけですが、さらに細かく分けると以下の5つに分岐します。
ex. How do you go to school? —— By bike.
まず疑問詞はhowだけで使われているので、「どのように」と訳します。
このhowは副詞のはたらきをしているため、do you go to schoolは完全文ですし、
howの答えもBy bikeという風に副詞で答えています。
ex. How are you? —— I’m fine.
これも疑問詞はhowだけなので「どのように」という訳です。
しかしこのhowは形容詞(叙述)なので、are youの部分はC(補語)が抜けています。
howの答えもI’m fine.のfineの部分でC(補語)になっていることがお分かりいただけると思います。
ex. How many pencils do you have? —— I have two (pencils).
これは疑問詞howの後にmanyという形容詞があるので「どれくらい」という訳です。
さらにmanyは形容詞(限定)、つまり後ろに名詞を従えるものなので、
how many pencils「どれくらい多くの鉛筆」全体で一つの疑問詞を形成しています。
そうなると、pencilsという名詞が後ろの文から抜けてきたということになるので、
do you haveの部分はhaveの目的語が抜けた不完全な文になるというわけです。
how many pencilsがOになっているので、その答えとなっているtwo (pencils)もO(目的語)になっていることに注意しましょう。
ex. How sad did they look? —— They looked a little sad.
これも疑問詞howの後にsadという形容詞があるので「どれくらい」と訳します。
sadは形容詞(叙述)、つまりC(補語)になるはたらきがあるので、
後ろの文did they lookはCが欠けた不完全文になっています。
答えもa little sadとなっていることに注意しておきましょう。
ex. How early do you go to school? —— I go to school as early as 6 o’clock.
これも疑問詞howの後にearlyという副詞があるので「どれくらい」という訳です。
earlyは副詞、つまり文の要素にはならないので、後ろの文do you go to schoolは
何も抜けがない完全な文となっています。
まとめておくと、以下の通りです。
(1)howのみ
①<how>+完全文
②(how)+Cがない文
(2)how+α
①[how+形容詞+名詞]+不完全文
②(how+形容詞)+Cがない文
③<how+副詞>+完全文
以上3つの知識を総合して問題を考えます。
Harvard University economist W. Kip Viscusi recently asked a group of smokers to guess how many years of life, on average, smoking from the age of twenty-one onward would ( ) them.
まず、how以下が間接疑問文で名詞のかたまりになっています。
次に、how many yearsが疑問詞なので、これ自体がhow節中のS・O・Cのいずれかになります。
つまり、後ろの文は不完全文(S・O・Cのいずれかが抜けている)ということが分かります。
how節の中身は以下のような文構造になっています。
smokingがSなので、how many yearsがSである可能性は消えます。
OかCのいずれかです。しかし、空所の後にはthem、つまりOがすでにある訳です。
以上から導き出せる結論は、
空所に入る動詞はSVOO形もしくはSVOC形を作る動詞だ
ということです。
したがって、正解は(a) costになります。
costはSVOO形、つまり“cost (人) (物)”の形を取って、「(人)に(物)を犠牲にさせる」という意味を作りますが、その他の動詞(earn/make/spend)はSVO形しか作れないため全て不適となるのです。
[問題文訳] ハーバード大学の経済学者W.キップ・ヴィスクーシは最近喫煙者集団に、21歳以降喫煙することは自分たちに人生のうちの何年間を平均して犠牲にさせるか推測してみてくださいと頼んだ。
いかがでしたでしょうか?
英語を勉強していると「意味さえ分かればいいんだ!」という意見で無理を通そうという人を少なからず見かけますが、本問のような問題だと意味だけでは答えを確信して選べないと思います。
英文構造は思っている以上に「機械的」「体系的」なので、ちゃんと品詞の知識を身につけると英文の構造が直ちに見えてきますから、読解スピードも飛躍的に向上します。
こうした文法問題でも自信を持って選べるようになってきますので、ぜひ品詞の知識を身につけていきましょう。